無職の視点(NEET's view)

無職なりに色々と考える事があるのだ

Digression:そもそも決算書ちゃんと作れてる?

加古川市民病院機構の話をつづける前に、別の病院の財務諸表を見ていると面白い事を見つけたので、少し余談とばかりに今日の話題にしてみます。以下は地方独立行政法人である山形県酒田市病院機構の損益計算書です。

f:id:todayhitokoto:20171020181114p:plain

出所:山形県酒田市病院機構資料より無職作成

一見するところ、普通の決算書とあまり変わりがないように思われますが、オレンジで示した部分に通常見慣れない勘定科目が載っています。

 「過年度損益修正益」と「過年度損益修正損」

過年度損益修正とは、その名の通り過去の決算における誤謬を修正する項目です。一般的に上場企業などではそのようなミスが発覚した場合、訂正有価証券報告書などを再度提出するなどといった遡及修正が行われますが、過年度損益修正勘定を用いた修正も可能です。ただし、この方法では何処に修正があったのかわからない欠点があります。

さて、同機構の同項目を見るところ、なんと驚くべきことに毎年過年度損益修正が行われているではありませんか。これは、毎年決算に何かしらのミスがある事を意味しています。それも必ずしも小さいものばかりではなく、1億円単位の修正もちょこちょこあります。これはどういう事なのでしょうか。

退職給付費用・引当金処理に問題か?

特に修正損益が大きく出ている2011年度の詳細を見ると、営業費用項目の「退職金給付費用」「貸倒引当金繰込」「賞与引当金繰込」が合計で10億円近く増加していることが分かります。また、同年に引当金戻入益が5億円弱発生しています。

これらはすべて、引当金に関する項目である事から、退職給付/貸倒引当金/賞与引当金の引当にあたる前提や計算方法にミスがあったのではないかと推測されます。これらの項目が前年度発生していないことから、発生時に費用認識するという旧来の会計手法を用いていたのではないでしょうか。

以前作成したものと同じように、同機構の一般企業風に調整した損益計算書を作成すると以下のようになります。未だに収益構造は補助金への依存が続いていますが、2011年度に大きな修正が入って以降は少しずつ粗利益も改善してきているように思われます。過年度収益修正もありますが、額は小さくなっています。

f:id:todayhitokoto:20171023120510p:plain

出所:山形県酒田市病院機構資料より無職作成

同機構だけではない、地方独立行政法人の杜撰な会計

実は一つ一つ調べてみると、このように過年度修正損益が多く出ている地方独立行政法人は珍しくありません。地方独立行政法人の会計は毎年監査を受けるはずなので、本来はこのような修正が毎年発生するという理由は良く分かりません。

もしかしたら、この修正の裏には病院経営に独特の個別的な事情があるのかもしれません。しかし、加古川市民病院機構のような情報開示に積極的な機構では、そのような修正は発生していないことからも、単に会計が杜撰なだけとみるのが妥当でしょう。独立行政法人は公の器ですから、この辺りはきちんと改善されていってほしい所です。 

にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村